映画「みんなの学校」でおなじみ! 木村泰子さんと考える未来の学校と社会

201702/03

【レポート】10年前、10年後を想像してみよう!(大阪/2017.1.26前編)

講師:木村泰子先生/塚根洋子先生


2017年1月26日金曜日に大阪市中央区民センターにて開催された「第6回みんながつくるみんなの学集会」(主催:特定非営利活動法人Creative Debate for GRASS ROOTS )のレポートを前半後半に分けてお届けします。

「10年前の自分を想像してみましょう。今は当たり前だけど、当時は想像できなかったものは何?」という木村先生の問いかけから学集会がスタート。

「順番とかないし、挙手とかもしなくていいから、自由に思いついた人からどうぞ!」

真っ先にあがったのは「テレビ電話」という声。続いて、スマホ、電子黒板、タブレット……という声に続いて、「仕事がなかった」という人が。「あれ、そういう意味?」という雰囲気が会場に流れると、すかさず「オールOKです!」と木村先生。すると、安心したように、「教員になるという夢」「NPOで活動している私」など、回答の幅が一気に広がった。

続いて、「今後は今から10年先を想像してみて。今は考えられないけど、こういうことが当たり前っていうことは?」と新たな問いが投げかけられると、「日本語を海外で教えている」「イーラーニング」「在宅勤務」「全自動の家事マシーン」「スマホ中毒者の増加」「コミュニケーション不足」「インクルーシブ教育・社会」……など、自分の意見を遠慮なく言う空気ができあがった。

最初の質問を自分なりに解釈し、「仕事がなかった」と発言した人がいたが、木村先生の一言で、その人を受け入れる空気がその場に一瞬にしてできたためだ。つまり、その人が「学びのリーダー」になったわけだ。

すると会場から「インクルーシブ教育って何ですか?」との問いが。この人も学びのリーダー。きっと会場にはその言葉を知らない人もいたはず。でも、その人が質問してくれたおかげで、胸をなでおろした人も多いはず。その質問には、大空小学校に長期ボランティアで入っている東京大学大学院の二見さんが丁寧に回答してくれた。

「わかりましたか?」という問いに「はい」と答えた参加者。すると木村先生は「大空ではわかりましたか? っていう問い方はしない」と説明。「だって、そう聞かれたら、はいって答えればいいから、わからなくても面倒だからそう答えとこってなるやろ」と。なるほど。その通りだ。「わかりません」って子どもが言ってくれる方がむしろ大空の先生は安心なんだとか。

次に木村先生が質問したのは「子どもたちが社会に出て生きてはたらく力を身に付けられるには、小学校の間にどんな力を身に付けるべき?」という問い。会場からは次のような回答が次々に出た。

自分の意見を言う力、言葉を伝える力、自分を信じる力、協調性・積極性、困っていると言える力、失敗を恐れない力、好奇心・探求心、自分で学ぶ力、折り合いをつける力、文章を読む力、自尊心、相手の立場に立って考える力、お金の計算をする力、ICT、表現力……。

およそ10年前に大空小学校ができた時、全ての教職員で「10年後の未来」を考えたそうだ。そこでは、世の中が多様化し、自分の価値観では子どもは育てられないと思ったという。先生の言うことを聞ける子がいい子。そんな価値観は通用しない。先生が正解をちらつかせない。その子が安心して学べる環境を大切に。そんなことが当たり前の社会になると、みんなが10年後の学校の姿を描いた。

木村先生と共に大空を作ってきた塚根洋子先生もこう語った。「今までの手が使えない。毎日毎日うまくいかない。今までの通りやっていたらアカン。だからみんなでやり直しをしました。そうしたら新しいことを考えるって楽しいなって気づいたんです。教員が困っていると子どもたちがいろいろ教えてくれえる。自分たちが変えていかねばと思いました」。

そうして考えられたのが、大空小学校が大切にする4つの力。

・人を大切にする力
・自分の考えを持つ力
・自分を表現する力
・チャレンジする力

を木村先生がホワイトボードに記した。目の前の子どもたちがこの4つの力を授業中にいかに獲得できるかという基準を授業の指標としたのだ。「他のことは捨てて、この4つに集中した」と木村先生。「なかにはそんな力を身に付けることができない子もいるのでは?」という質問もあったそうだが、「最初は私もそう思った。でもそんなん子どもに失礼や!」と自省したという。

「無理じゃないと思います。可能です。子どもたち一人ひとりに尺度があるんです。ほかの子どもと比べるからいけない。周りの子と同じかどうかが問題じゃないんです。」という塚根先生に、「漢字が書けて当たり前じゃないの。書けない子はバツじゃない。その子がやりたいことをやればいい。その子が得意なことやったらいいんです。今の学校では一部の子しか学べてません」と補足した。子どもを見る目をきちんと持っていないと、知らず知らずのうちに、障害を理由に差別や偏見を子どもたちに教え込んでしまう危険性があるのだ。

木村泰子先生勉強会のお知らせ

第7回みんながつくるみんなの学集会

映画「みんなの学校」の舞台になった「大空小学校」元校長の木村泰子先生と塚根洋子先生を囲んで、教育について語り合い、学び合う定例会です。

2時間半があっという間に終わり、まだまだ話し足りない、そんな学びの時間を皆さんで作りましょう。

日時:2月24日(金) 18:30-21:00
会場:大阪市中央区民センター3階 第2会議室(堺筋本町徒歩3分)
参加費:2500円(学生1300円)

http://kokucheese.com/event/index/448307/